夢見る仔猫の恋物語

 いつまでも大好きなたった1人だけに贈る、たった1つの真実の物語。
わたしが綴る、深くて悲しくて切なくて、何よりも愛しい恋物語。
たとえもうわたしの言葉が届くことがなかったとしても、この物語は永遠にキミだけを愛しているという証。


 *
 
 
 ―夢。
 これは夢だ。
 幼い頃から何度も繰り返し見てきた映像。
 約束の夢。
 はらはらと舞う桜の花びらの中で、誰かが立っている。
 幼い頃は、思い切り見上げる距離だった。
 今はもう、背伸びをすれば目線の高さはあまり変わらなくなっている。
 『・・・この手紙を、君に・・・』
 夢の中の誰かは、今の私とあまり年の変わらない少年だ。
 制服姿で差し出されるのは、1通の手紙。
 よく戦争を題材にした映画の1シーンで見るような、そんな光景。
 夢の中の私は、その手紙をそっと受け取るととても大切そうに胸に抱く。
 そして、涙の雫で頬を濡らす。
 『・・・これが最後の手紙・・・。もし、君がこの手紙をずっと持っていて、変わらず信じてくれるのなら・・・・・・』
 夢の中の少年の顔は、いつも影になっていてよく見えない。
 柔らかい声だけが優しく聴こえていた。
 『・・・その時には、必ずまた逢おう・・・・・・』
 それは約束。
 果たされることがないと知りながら、それでも未来を約束する。
 『・・・・・・ずっと変わらないよ・・・。ずっと信じてるから・・・』
 そう答えたのは、少女の声だった。
 約束、だよ・・・・・・。
 声にならず、風に消された言葉。
 夢はいつだってここで終わる。
 この先の未来は1度も見たことがなかった。
 急に強くなった風に煽られて、花びらが渦を巻くように舞っている。
 桜の花びらに遮られて、もう見えない・・・・・・。
 
「・・・・・・寝過ごした」
目を覚ました私の第一声はソレだった。
今日は入学式というやつで、私は新入生だ。
何事も最初が肝心だと言うけれど、既に最初は絶望的だ。
「・・・せっかく初日からバシっとキメようと思ったのに・・・」
ベッドサイドの本棚にちょこんと置かれた目覚まし時計に目をやれば、時刻は7時15分。
学校はすぐ近くなので入学式に遅刻するということはないのだが、慣れないメイクや髪に時間をかけられる余裕はなかった。
昨日のうちに準備だけはしておいたのだが、やり直す時間のない1発勝負はあまりにも分の悪い賭けだった。
こういう時、黒髪ロングという私の髪は実に便利だ。
染めていないのは家が厳しいからだが、バシッとイマドキの可愛い女の子に変身する以外にも、髪型次第で真面目で模範的な生徒像を演出できる。
「入学式だし、それでイイや・・・」
初日から教師に目を付けられるのメンドクサイ。
予定変更で真面目な生徒のフリをしよう。
そうと決まれば、メイクも必要ないのでゆっくりと準備が出来るというものだ。
さすがに2度寝は出来ない時間だが、普段より余裕をもって朝食を摂ることが出来そうだ。
幾度となく繰り返し見る夢のことなど頭の隅に追いやって、私は脳内で今日の予定を改めて構築しなおした。

予想通りというか期待はずれというか、入学式は滞りなく問題もなくあっさりと終わった。
入学式初日からいきなり超気合入れてますという生徒は少なかった。
私のように寝坊が理由ではないだろうが、さすがに初日からハメを外すほどの学校ではなかったようだ。
私の場合、寝坊が結果オーライだったということだろう。
いつもは何も感じない夢に、少しだけ感謝しようと思った。
そのせいか、帰りは少し遠回りして大きな桜の木のある公園を通って帰る気になった。
入学式しかなかったせいで、昼前には学校の敷地から開放された。
学校から家までの距離はあまり長くない。
理由は簡単、家から自転車で通える距離の学校を志望校にし、そのレベルに合わせて受験したからだ。
そのせいで寄り道しようと思えば必ず遠回りになるのは、家が学校を挟んで駅の反対側にあるせいだった。
公園は家と学校を結ぶ線を一辺と考えた時、正三角形の頂点の1つになる位置に存在した。
遠回りというのは、つまり帰るまでに片道分増えるという計算。
時間に直すと自転車を漕ぐのはせいぜい10分くらいなので、倍になったところで20分だ。
既に人影も疎らになった教室を後にすると、さっさと昇降口まで急ぐ。
この学校にも桜の木はあったが、やっと創立10周年程度の学校に生えている桜の木の樹齢などたかが知れている。
悪くはないが、わざわざ観賞しようという気にはなれない。
昇降口へ向かって歩いていくと、2人の女子生徒とすれ違った。
すれ違いざま、彼女たちの話し声が聞こえてくる。
―桜の下には、死体が埋まってるんだって・・・。
―人の血を吸うから、あんなに鮮やかな色の花を咲かせるんでしょ・・・。
入学式だというのに物騒な会話をしているものだ。
ちょうど校舎の影になる位置にいるせいで、何ともいえないホラー臭が漂っているように見えた。
彼女たちの制服に留められた学年を表す校章は2年と3年。
仲の良さそうな先輩2人に頭を下げると、さっさと昇降口から外へ出る。
外は春の陽射しと微風が気持ちよく、自転車を漕ぐのに都合の良い程度の陽気だった。

自転車を走らせること15分少々。
ゆっくりと景色を楽しみながら移動してきたので、公園に着く頃には軽く息が上がるくらいだった。
公園の隅に自転車と停めると、軽く息を整える。
目的の桜の木は、広い公園の中にある高台の中央にあった。
けれど、私が桜を鑑賞する場所は、高台ではない。
自転車のカゴから鞄と持ってきていた荷物を取り上げ、公園の中へと入っていく。
目指すは夏祭りや秋祭り、自治会活動で活躍する屋外ステージだ。
ステージといっても、観客席があるような遊園地で見かけるような大きなものではない。
せいぜい幼稚園のお遊戯会や舞台配置に気を遣った高校演劇、有志の劇団が練習で使ったり出来る程度で、舞台袖はそのまま裏側へ行くしかないという簡易な造りだ。
売りは石造りだから丈夫だし、飛んでも跳ねても音が響かない程度だと思う。
広くて静かな公園は、多少騒いでも近隣住民から苦情がくることはない。
公園の四方のうち一方は防災用の池に、ステージの裏に当たる一方は裏山に、そして残る二方は広い道路に囲まれた公園なのだ。
この公園は、小さい頃からの私のとっておきの修練場だった。
ステージの上に鞄と持ってきていた荷物を置いて、その横にちょこんと腰かける。
鞄を漁ってポッキーとペットボトルの紅茶を出すと、私の1人お花見が始まった。
麗らかなとはよく言った表現だと思う。
ステージからちょうどイイ角度で見える桜の木は、今年も見事だった。
ポッキーを齧りながら、桜の木を眺める。
両手で枠を作って桜を中心に絵の構図を決めるようにしてみれば、その桜は夢で見る桜と酷似して見えた。
「・・・・・・よし」
一息ついたところで、食べかけのポッキーを鞄に突っ込むと、もう1つの荷物に手を伸ばす。
そんなに大きくない荷物は、実は見た目よりも重い。
ハードケースの中に壊れ物が入っているせいだ。
ハードケースの殺傷能力は高いと思うが、中身は大切なものなのでもちろん取扱注意。
私にとっては無意識に近いほど慣れた動作で荷物を解くと、中のハードケースを取り出して注意深く開ける。
中に入っているのは、私の愛用のフルートだ。
さっさと組み立てて、感触を確かめた。
誰もいないけれど、チューニングは大切だ。
軽く息を吹き込んで音を鳴らしながら、安定感のあるいつもの音になるように調節した。
「・・・・・・さて、誰もいないリサイタルでも始めますか」
誰に言うでもなく、そう宣言してステージに立つ。
観客もなく、音響設備もないステージだったが、ステージの上に立つだけで気が引き締まるような気がして、私はこのステージでの練習が1番好きだった。
楽器を唇にあて、すっと息を吸う。
たったこれだけの動作で、私の集中は発表会の舞台の上と同じレベルまで高まっていった。
奏でるのは、好きな曲。
いつも最初はこの曲と決めている。
主旋律を奏でながら、ココロの中で歌う。

『祈りはどんなに祈っても届かず
 呟く声は蝉時雨に消える

 もう何度引き裂かれ 千切れただろう
 希望が絶望に変わっただろう
 今度こそ強くなると 約束するわ
 だから今は この手を握ってて

 また開幕の合図が響く 仕方なく繰り返しを踊る
 この世界を綴る物語 終末はあなただけの為に

 小さく祈り続ける
 ただ ただ 「幸せに」

 残された未来がもう少なくても
 大切なものを守り通したい
 その為には神様に逆らうことも
 迷わず厭わず罪を犯す

 夏の蝉のように儚くて もうすぐ私は死ぬとしても
 あなたに傍で笑って欲しい 倖せを下さい

 もう1度始めましょう
 今度は きっと 幸せな結末を期待して
 せめて最後のその時まで
 ずっと 優しく 微笑んでいられるように』

大好きな曲だった。
春なのに季節感もなにもあったもじゃないけれど、確かにこれは私が今1番好きな曲。
そんな切ない気持ちを知っているのかだとか、どこに共感できるのかとよく聞かれる。
そもそもオリジナルの曲の歌詞ではない。
この曲は、元々ある別の曲のアレンジで、歌詞もアレンジだ。
去年ハマったゲームの挿入歌。
物語はミステリーで猟奇的かつ目が離せないスピード感があって、続きが気になって仕方がなくて徹夜して進めたくらいだ。
どうしても『普通の幸せ』を手に入れたくて頑張って足掻いて何度も挫折して。
大切なことは『大切な人を信じること』だと教えてくれた。
それでも信じきれず打ち明けられず絶望して悲観して、それでも希望に縋る物語に引き込まれた。
取り留めなく考えながらも、奏でる音には注意を払った。
演奏するのは好きだけど、吹奏楽部に入る気はなかった。
コンクール以外で決められた曲ばかり練習するのは、ハッキリ言って楽しくない。
 球技系の運動部はマズイだろうが、何か面白そうな部活があればそこに入ろうと決めている。
 今1番気になっているのが演劇で、次がチアリーディング、どちらも毎年コンクールで賞を取っていることで有名だ。
 1曲ウォーミングアップを兼ねて好きな曲を奏で終わった私は、1度楽器を降ろす。
 別に1曲で集中が切れたわけでもなければ他に曲を知らないわけでもないし、これで演奏を終えるつもりはない。
 ただ次に奏でようとしている曲は、クラシック。
 本来なら、ピアノ奏者と一緒に演奏するための曲。
 1人きりで奏でるための曲ではないので、とても難しい。
 小学生の音楽発表会の余興にと先生から頼まれて、誰か同じ年くらいのピアノ奏者と組むという話を聞いたのはつい先月のことだった。
 あくまで余興で演奏するだけなら別に気にしないのに、同じ年くらいのピアノ奏者という存在が私にプレッシャーをかける。
 ただの余興だから軽い気持ちでと言われても会ったことのないピアノ奏者に馬鹿にされるような演奏をするわけにはいかないのだ。
 曲目は、フルートとピアノのためのソナタ・ホ短調『ウンディーネ』とフルートとピアノのためのソナタの2曲。
 小学生たちの音楽発表会であっても、審査時間というものがあるのだ。
 その審査時間の幕間に私と見知らぬピアノ奏者が余興を行う。
 曲目は先生が勝手に決めたようで、理由は即興で合わせられるように有名な曲の方が楽だというものらしい。
 発表会は来週の週末に迫っているというのに、私はまだ肝心のパートナーと会ってもいない。
 一緒に練習できる時間が少ないのだからという理由で無難な楽曲が選ばれたのだろう。
 勝手に自主リサイタルをはじめて、どれくらい経過しただろうか。
 一通り課題曲を演奏し終えると、ふと桜の木に視線を移す。
 私は1人花見のためにこの公園に来たのであって、練習のために来たわけではないのだから。
 離れた舞台の上にまで桜の花びらが舞い散る様子はとても美しい。
 その幻想的な光景に、思わず演奏したくなってしまったくらいだ。
 ふと、桜の木の下に人影があるのに気づいた。
 「・・・・・・げ」
 人影に心当たりがあるわけじゃない。
 私の口から思わず呻き声が漏れたのは、練習途中の曲を見知らぬ誰かに聴かれていたからだ。
 ちょうど桜の陰になっていて見づらいが、シルエットからすれば恐らく少年。
 さらに見間違いでないのなら、今日から私が通うことになった学校の制服に身を包んでいる。
 私は荷物を引っ掴むと大股で高台の桜の木に向けて歩き出した。
 人影はもちろんそれに気づいただろうが、どういうわけかそこから1歩も動かなかった。
 私なら、難癖をつけられる前にさっさと退散してしまうのに、見上げた根性だ。
 高台は見た目よりも急になっていて、一気に登ると息が上がった。
 「・・・・・・聴いてた?」
 息を整えながら、キッと相手を睨んだ。
 やはり見間違いではなかった。
 私が通う学校の制服姿の少年が、何故か嬉しそうな表情で突っ立っていたのだ。
 丁寧語で訊かなかったのは、少年の襟元に光る真新しい校章が私と同じ1年生のものだったから。
 当然初対面の大人しそうな少年だった。
少年は私の問いに何も言わず、黙って頷いた。
拍子抜けした。
別に聴かれて困る演奏だったわけでもない。
外で練習をする時は、常に聴衆を意識して本番さながらの気持ちで奏でているのだから、別に聴かれて困ることでもなんでもない。
それなのに、わざわざ聴いてたかを問いかけてしまったことで、逆に恥ずかしくなってしまった。
「・・・・・・そう。変なもの聴かせて悪かったわ。・・・お花見の邪魔したわね」
少年が本当は何の目的でそこにいたのかは知らないが、急に恥ずかしくなった私はそれだけ言うとくるりと踵を返す。
「・・・綺麗な音だったね」
不意に、背後から柔らかい声が届く。
優しく響くその声に、私は思わず振り返る。
初対面の少年なのに、その声だけは知っていた。
「・・・・・・寝坊の原因・・・」
その少年の声は、今朝も見たあの夢に出てくる少年の声と酷似していた。
似ているなんてレベルじゃなく、もう本人としか言いようがないくらい、同じだった。
「寝坊・・・?」
私の言葉に、少年が不思議そうな表情で首を傾げている。
「・・・なんでもない、気にしないで」
変なことを口走ってしまったせいで、居心地の悪い視線に晒される。
ただ不思議そうに首を傾げているだけなのに、柔らかい雰囲気に呑まれそうになった。
少年はしばらくそのまま私を眺めていたが、やがて穏やかな笑顔を浮かべた。
「・・・・・・・・・変わらないね」
確かに初対面のはずなのに、少年は懐かしむような目で私をまっすぐに見つめる。
絶対に初対面だと言い切れるのに、その言葉は私の心にすんなりと入ってきた。
「・・・変わらないよ」
何のことだかわからないのに、そう答えないといけない気がしたのだ。
「・・・・・・また、逢えたね」
ハッキリ言って少年の言動は電波だと思う。
それなのに、本当に嬉しそうに今にも泣き出しそうな表情で私を見つめる相手を見ていると、どういうわけか何か切ないような今まで味わったことのない締め付けられるような気持ちになってくる。
私はこの感情の名前をまだ知らない。
少年は私にゆっくりと1歩近づくと、そっと大切なもののように私を抱きしめた。
普通なら、ここで叫ぶとか突き飛ばすとか、持っていたものを落とすとか、とにかくそういった行動に出てもおかしくないと思う。
それでも冷静に、持っていた荷物も楽器も落とさなかった私は、自分でも偉いと思う。
「・・・・・・ありがとう・・・」
今にも消え入りそうな声で、少年は私に囁いた。
その囁きは、まるで愛を囁くような言祝ぐ言葉のような響きを持っていた。
そうか。
私は直感的に感じた。
これは、夢の続きなのだ。
この少年は、私がもう1度逢いたいと望んだ存在。
また逢おうと約束をくれた存在。
「・・・・・・ずっと・・・・・・信じてる・・・。変わらない・・・」
だから、私が言うべき言葉はこれしかなかった。
これは夢の続き。
今までに1度も見たことが無い未来。
私の望んだ、あの日の続き。
ずっと変わらない。
遠い日の約束。
待ってる。
この場所で。
ずっとキミを・・・・・・。

入学式の日から1週間が過ぎた。
そろそろ学校の授業がまともに始まりだして、既に面倒に感じている。
放課後が来る頃には、チャイムの音はまだかと時計と睨めっこを始めてしまうくらいだ。
部活勧誘も解禁された。
放課後は当然色々な部活を見て回ることに忙しくなるはずだった。
けれど、私が選んだ部活は帰宅部。
それは・・・
「帰ろう?」
帰り支度を始めた私に、声をかけてくる存在がいる。
「うん」
その声に応えて、鞄の中に手早く荷物を詰める。
教科書とノートは机の中に置いたままだ。
宿題なんて授業開始までの短い時間に終わらせれば充分だ。
椅子から立ち上がると、声をかけてきた存在と連れ立って教室を後にした。
まだ教室にいた他の生徒から冷やかしの声が飛んできたが、気にしない。
「今日こそ、完成させようね」
私の横で、私に笑いかける存在は当然入学式の日にはじめての再会を果たしたあの少年。
「大丈夫、私のパートはようやく覚えたから」
傍らの柔らかい笑みを浮かべる存在に私も明るく笑顔を返した。
帰ろうと言って向かった先は、第2音楽室。
広くなく少し埃っぽいこの音楽室は、週1活動のコーラス部の部室らしい。
今は全部活が勧誘のために中庭やグラウンド、体育館や武道場などを使用して随時パフォーマンス中なので、特別に許可を取って借りたのだ。
発表会まであと僅か。
「・・・それにしても、どうしていきなり曲を増やしちゃったのさ」
そう言いながら少年が用意しているのは、ピアノ用の楽譜。
教師から借りてきたグランドピアノの鍵を開け、慣れた様子で演奏の準備を始める。
「なんか、この曲の気分だったんだもん」
応えながら私が用意しているのは、もちろん譜面台。
一応自分のパートは覚えたといっても、楽譜は重要だ。
「それを望むのなら、いいけどね」
合わせるだけだから、と少年は楽しそうに笑っている。
「だったらイイじゃない」
私も笑った。
ケースからフルートを取り出し、軽くチューニングをする。
それに合わせるように少年は鍵盤に指を躍らせた。
そう。
私のパートナーはどういう偶然か何の因果かこの少年だった。
私たちはあと数日に迫った発表会の余興のためにもう1曲勝手に増やしたのだ。
曲目は『鳥の詩』
春の曲ではないけれど、すぐに訪れる夏の曲。
はじめて経験する、夢の続き。
風に乗せて、私と少年の紡ぎだすメロディーが流れていく。
どこまでも遠くに。
この空の続く場所へ届くようにと願いを乗せて。

どうか、今度こそ倖せな結末を迎えられますように・・・・・・。





わたしがもし、もう2度とキミと言葉を交わすことが出来なくなっても、わたしがキミに贈る物語に込められた想いは、きっと届くと信じ続けていたいと思った。
キミがわたしを信じられなくても、わたしはわたしの想いを誰よりも信じられるのだから。
だから、これはわたしだけの物語。
たった1人のために綴り続ける、永遠に終わらない、深い愛の物語。
恋が愛に変わった日から、わたしはもう囚われていて、ただキミがそれを知らないだけだから。
渡り行く風に想いを託して、大切なキミに届けることが出来たなら・・・・・・。
製作者:月森彩葉