鮮赤のメシア 三章

 列車から駅のホームへと降り立つと、足元に荷物を置いたディーは凝り固まった体をほぐすように大きく伸びをした。彼女に続いて列車を降りたダニエルも、長時間列車に揺られていたせいか顔には疲労がにじんでいる。
 ディーが拠点としていたシェンコーストからミロディまでは、列車を乗り継いで数日かかる距離である。座席の座り心地はそれなりに快適とは言え、ずっと同じ姿勢でいれば疲れるのも当然だろう。
 荷物を手に取ると、ディーはホームの端へと向かった。
 やや高台にある駅から見下ろす形となる街並みは、活気があるとは到底言い難かった。街自体はそれなりの規模であるが、通りを行く人影はまばらだ。おそらく多くの住民は家の中に閉じこもっているのだろう。異形の脅威に怯えながら。
「この街は、光石(こうせき)の産地として栄えていたと記憶していましたが」
 今となってはそんな面影も見えない街を見下ろし、ディーがぽつりとつぶやいた。
 【光石】というのは、衝撃を与えると発光する特殊な性質を持った鉱物である。産出される量は極めて少なく、その大半は討伐士協会によって買い占められる。そのため一般の市場に出回ることはほとんどなく、仮に流通したとしても破格の値で取引された。
 ミロディはその数少ない光石採掘地の一つとして知られている。
「異形騒ぎが起きて以降、人が減る一方です」
 特に鉱員がいなくなるのが痛手だと言って、ダニエルは眉を寄せた。その言葉に、ディーは街からダニエルへと視線を移した。
「その極めつけが、協会支部の総員退避」
 呆れた様子でそう言って、ディーが(かぶり)を振る。協会始まって以来の失態だとつぶやくと、彼女はもう一度大きなため息をついた。
 ミロディへと向かう列車の中でディーがまず確認したのが、討伐士協会ミロディ支部の動向だった。協会の中でも屈指の規模を誇るミロディ支部、それが手をこまねいているというのがディーには腑に落ちなかったのだ。
「嘘ではありませんよ。本当に、誰一人として残っていないのですから」
 ディーの言葉に、慌てたようにダニエルが口を開いた。それに、疑っているわけではないとディーが返す
 実際、ダニエルの言葉をディーは疑っていなかった。
 光石は協会にとって重要な資源である。その産地であれば重要拠点として支部の規模は大きくなり、そこに駐留する討伐士たちも実力者を揃えるのが当然だろう。街周辺の巡回も念入りに行っていただろうし、住民と良好な関係を築こうと努力していたはずだ。
 それなのに、ダニエルは討伐士協会の支援を見限って自分でどうにかすべく動き出した。それはミロディ支部が機能不全に陥っているということの証明となるだろう。だからこそディーはダニエルの言葉を信じているし、同時に警戒もしている。この案件は、おそらくダニエルが考えているよりもずっと厄介なはずだ、と。
「長旅でお疲れでしょう。今日は私の家でゆっくり疲れを癒してください」
 黙り込むディーを見て疲れたのだと思ったのか、ダニエルはそんなことを提案してきた。その言葉で我に返ったディーは、お気持ちはありがたいですがと(かぶり)を振る。
「すぐに動かないにしても、地理を把握しておく必要があります。できれば先に一通り街を見ておきたいのですが、かまわないでしょうか?」
「ディーさんがそのようにおっしゃるのでしたら」
 自分はかまわないとうなずき、荷物を手にしたダニエルは先導するように歩き出した。ディーもその後に続く。
 ホームを出たところで、父さんと呼びかける少年の声が響いた。ダニエルが足を止めて声のした方を振り返るのとほぼ同時に、十代前半くらいと思われる年頃の少年がダニエルに飛びつく。
「お帰りなさい、父さん!」
 己の腰のあたりに抱きついた少年を見下ろし、ダニエルが微笑む。
「スヴェン、迎えに来てくれたのか?」
「今日帰ってくるって聞いてたから」
 そう言って顔を上げた少年が、ダニエルのうしろに立つディーに気づいて目を向けた。
 じっと注がれる視線にわずかに首を傾げ、ディーが小さく会釈する。それに会釈で返し、少年はダニエルから離れた。
「鮮赤のメシアって、この人?」
 自分を見上げて問いかけてくる息子にダニエルが答えるよりも早く、ディーが口を開く。
「たしかにわたしは討伐士ではありますが、鮮赤のメシアではありません」
 その言葉に、スヴェンは明らかに落胆した様子を見せた。
「ご期待に沿えなくて申し訳ありません」
 そう言って頭を下げたディーに、慌てたのはスヴェンだった。
「いや、勝手に期待して勘違いしたのはこっちなんだから、アンタが謝る必要はないだろ。だから頭を上げてくれよ」
 鮮赤のメシアは死んだってウワサだったし、とスヴェンが付け加える。それを聞いて、そういえば、とディーは思う。ダニエルもまた、鮮赤のメシアは死んだと知りつつも、噂にすがってシェンコーストへとやって来た。それほどまでに彼らは追い詰められているのだ。
 ようやく顔を上げたディーに、ほっとしたようにスヴェンが息を吐きだした。


 誰も何も言わず、どこか気まずい空気の中、そうだ、とダニエルが唐突につぶやいた。
「――戻ってきたら、すぐに役場に顔を出すようにと言われていたんだった」
 あからさまな棒読みでそう言うと、彼は荷物を手にそそくさと歩き出す。小走りに立ち去るその背中に、残された二人は思わず声を上げた。
「……逃げたな」
「逃げましたね」
 ダニエルのうしろ姿が見えなくなるまで見送ったあと、スヴェンは困ったように頭をかいた。
「――オレにどうしろって言うんだよ」
 そうつぶやいて所在なさげに立ち尽くす少年に、ディーは声をかけた。
「スヴェンさん、でよろしいですか?」
「……え? あ、はい! オレ、スヴェンって言います!」
 ピシリと姿勢を正して答えた少年を見て、ディーはわずかに笑みをこぼした。
「わたしはダニエルさんから異形討伐の依頼を請けた何でも屋で、ディーと言います」
 そこで一度言葉を切って頭を下げ、続ける。
「もしご迷惑でなければ、街を案内してはいただけませんか?」
「お、オレでよければ!」
 しゃちほこばった様子で何度もうなずくスヴェンに、ディーは苦笑を浮かべた。
「わたしは元からこういう風ですから、楽に話していただいてかまいませんよ」


 駅舎の端にある展望台のようになった広場へとディーを連れてくると、スヴェンはそこから街を指さした。
「街の中央が市場、それを取り囲むようにして住宅街。この駅舎は街の西端にあって、ちょうど反対側に街道に繋がる門があるんだ」
 そう説明しながらそれぞれの場所を示す。街を出て北東に行けば現在使われている坑道が、南に行けば問題の旧坑道があるのだとスヴェンは語った。
 スヴェンの言う通り向かい側の端に街を取り囲む外壁の切れ目があり、門となっているようだった。
「市街地を外壁で取り囲んでいる街は珍しいですね」
 場所を覚えるために街を見つめながら、ぽつりとディーがつぶやいた。
 異形から身を守るには有効だが、建設費用などの問題から大半の街では外壁がない。列車の中から見た時も感じたが、この街の外壁はかなり強固に作られているようだった。年季が入った様子だが、定期的に手入れがされているようで修繕の跡がそこかしこに見受けられた。
「このあたりは昔から異形が多かったらしいから」
 スヴェンの言葉に、ああ、とディーはうなずく。そういえば討伐士協会の資料で見た覚えがあった。
 光石が産出される前のミロディは炭鉱の鉱山で、鉱員が異形に襲われることが多かったために外壁が建設されたとのことである。この街に討伐士協会の支部が設立された理由も、光石が安定して採れるからというのもあるが、それ以上に異形被害の多さが大きかった。
 しばらく街を見つめていたディーだったが、やがて視線をそらした。それに気づき、もういいのかとスヴェンが問いかける。
「大体の位置は把握しました」
 あとは実際に歩いて覚えます、とのディーの言葉にうなずく。
 展望台を後にして歩き出しながら、そういえば、とスヴェンが口を開いた。
「ディーって討伐士なんだよな?」
「……ええ、まあ。元が付きますが、一応討伐士ですよ」
 そう答えると、羨望に満ちた眼差しと声が飛んできた。――いいな、すごいな、討伐士。
「ランクは?」
 無邪気な問いかけに、ディーはわずかにためらう様子を見せる。
「さっきも言いましたが、今のわたしは何でも屋です」
 協会から除籍されたも同然だからランクに意味はない、そうディーがはぐらかしても、スヴェンはなおも問いかける。結局、根負けしたのはディーの方だった。
「特級ですよ」
 ため息混じりの言葉に、スヴェンの瞳が輝いた。特級、と弾んだ声で繰り返す。
「単独行動ができるのは、討伐士の中でも特に強い人だけだって聞いたことがあるぜ。やっぱり、ディーってすごいんだ!」
 キラキラした瞳を向けられてディーは戸惑った。明らかに誤解が生じている。
 単独行動をする討伐士がいるのも、彼らのランクが総じて高いのも事実だ。だが、討伐士は複数での行動を基本とする。戦闘にしろ調査にしろ、頭数は多い方が有利だからだ。
 それに彼女が単独で行動する理由は、ランクとは別のところにあった。
「何度も言いますが、今のわたしは何でも屋なんです。一人でいるのはそのためですよ」
 そう言ったディーに、スヴェンはどこか不満そうに頬を膨らませる。
「それじゃ、討伐士だった頃は誰かと一緒に行動してたのか?」
 問いかけにうなずきかけ、おや、とディーは首を傾げた。記憶を手繰るように虚空を見上げ、眉を(ひそ)める。――他の誰かと行動した記憶がほとんどない。
「何だ、結局単独行動してたんじゃん」
 そう言って笑うスヴェンに、違いますよと反論する。
「後方支援の部隊が一緒でした」
 だから厳密には単独行動ではなかった。それに、誰かと組んだ記憶は少ないものの、皆無ではない。
 思い出されるのは一つの姿。銀髪に(あお)い瞳の、まるで氷を思わせる色彩をまとった青年――ディーが討伐士協会を抜ける前の一年間、コンビを組んで任務に当たっていた相手だ。破天荒な人物ではあったが腕は確かだったし、相棒と呼べるほどに信頼もしていた。
 どこか懐かしむように微笑んだディーに、スヴェンは眉を上げた。ニヤリと笑って問いかける。
「何? それって男? もしかして恋人だったとか?」
「男性でしたが……」
 別に恋人だったわけではないとの答えに、スヴェンがつまらなさそうに声を上げる。
「本当に、何とも思ってなかったわけ?」
 不服そうな声にディーは嘆息する。スヴェンが期待するようなことは何もないのだ。
 討伐士の中でも、彼女らの立場は特殊だった。常に身を置くのは戦場、余計な感情を持ち込めば死に繋がる。それは自分たちのみならず、無関係な周囲の人間にまで影響を及ぼす。色恋に(うつつ)を抜かす余裕なんて、まったくなかった。
 それに、とディーは言葉を落とす。
「わたしが相手のことを相棒だと思っていても、向こうがどう思っていたかはわかりませんよ」
 彼とは自発的に組んで行動していたわけではない。上層部の命令だから行動を共にしていただけ。実際、何かにつけて彼はディーに突っかかった。相棒だと思っていたのは、きっとディーだけなのだろう。
 どこか寂しげにつぶやいたディーに、スヴェンはそれ以上何も言えなくなった。


         ◆


 時折案内のためにスヴェンが口を開く以外、どちらも何も言わずにただ街を歩く。
 スヴェンが沈黙にいたたまれなくなってきた頃、二人は街の中央にある市場へとたどり着いた。市場の真ん中を突っ切る大通りを歩きながら、脇道がどこへ続くのかをスヴェンが説明する。
 何本目かの脇道をすぎた時、一人の老人がスヴェンを呼び止めた。
「なんじゃスヴェン、かわいい子連れおって。彼女か?」
 ニヤリと笑った老人の言葉に、スヴェンの顔が赤くなる。
「なな、何言ってるんだ、アントンじいさん! そんなんじゃないったら!」
 慌てて否定するも、アントンはニヤニヤと笑うばかりだ。熱くなった頬を自覚しながら、スヴェンは大きく咳払いする。
「この人は父さんが探してきた討伐士だよ」
「……何でも屋です」
 ボソリと横からディーに指摘され、スヴェンは慌てて言い直す。だがその言葉はアントンには届いていなかった。
「何と、おまえさんも討伐士とな!」
 目を見開いて叫んだアントンを見て、ディーは眉を(ひそ)めた。まるで、つい最近討伐士を見たかのような言葉だ。今、この街に討伐士はいないはずではなかったのか?
「わたしも、と言うことは、他にも討伐士を見かけられたと言うことですか?」
 ディーの問いかけに、アントンは何度もうなずく。
「おお、見たぞ。若い男の二人連れじゃった。本部から来たと言っておったわ」
「それはいつの話です?」
 鋭い目つきで発されたディーの問いかけに、昨日じゃ、とアントンは答えた。ミロディ支部と連絡がつかなくなったため、確認のために協会本部から遣わされた討伐士がいるらしい。
 うつむきがちに首を傾げ、ディーは思考を巡らせる。
 人数から見ても、彼らが新たな討伐隊であるとは考えにくい。現地住民に対して偽りを述べる必要もないことから、おそらく本当に状況確認のための派遣なのだろう。
「お話、参考になりました。どうもありがとうございます」
 律儀に頭を下げるディーを見て、アントンが目元を和ませた。この程度気にするなと笑ったあと、真面目な顔になって付け加える。
「この街のこと、頼んだよ」
 その言葉にしっかりとうなずくと、ディーはこちらに向けて手を振りながら歩いていくアントンを見送った。老人の背中が完全に見えなくなってから、隣に立つスヴェンへと声をかける。
「この街の討伐士協会支部に案内してもらえますか」


 街の門からやや南に下ったあたり、外壁のすぐ近くの場所に討伐士協会ミロディ支部は存在した。重要拠点なだけあり、その建物はひどく堅牢な造りだ。
 だが今は無人となっているはずのその建物から、なぜだか物音が響いてきていた。ガタゴトと、まるで家探しでもしているかのような大きな音が。
「空き巣か……?」
 警戒するように身構えたスヴェンのつぶやきに、それはないでしょうとディーが否定する。
 討伐士という職種は高給取りである。名声も含め、その危険性に見合うだけの見返りがあるために討伐士を志す者は後を絶たない。もっとも、名声を得られるのはほんの一握りであるのだが。
 しかし討伐士の平均収入から考えて、わざわざコソ泥のような真似をする必要はない。――アントンが出会った者たちが正規の討伐士であるならば。
 様子を窺う二人の前で、ひときわ派手な倒壊音が(とどろ)いた。ぼふん、とドアの隙間から大量の埃が押し出される。周囲に響き渡る物音から、屋内で相当な惨事が起こったであろうことは容易に想像できた。
 連鎖的な倒壊音が収まった頃、ドアが開いた。埃と共にどこか幼さを残した茶髪の青年が中から転がり出てくる。青年は体をくの字に折り曲げて激しく咳き込んでいたが、しばらくすると大きく息をついて体を起こした。
「ああ、酷い目に遭った……」
 青年はそうぼやきながら体のあちこちを叩き、舞い上がった埃でまたくしゃみをした。
 離れた場所から青年の様子を窺っていたスヴェンが眉を寄せて口を開く。
「アントンじいさんが言ってたのって、アレかなぁ? 討伐士にしては、何か頼りなくない?」
 訝しげな少年のつぶやきに曖昧にうなずきながら、ディーは青年を観察した。
 青年が身にまとっているのは藍色のロングコートで、その左胸には鈍い輝きを放つ拳大のメダルがつけられている。ここからでは見えないが、おそらくメダルの表面には楯と剣の紋章が刻印されているのだろう。
 それらを確認し、ディーは小さくうなずいた。
「おそらく間違いはないでしょう」
「えぇー……ホントにぃ?」
 信じられないと言いたげな声を上げ、スヴェンはディーと青年とを何度も見比べた。げんなりとした表情を浮かべてつぶやきを漏らす。
「アレが討伐士って、夢が壊れるなぁ……」
 なおもくしゃみを連発していた青年だったが、やがて落ち着いたのか大きく息をついた。目尻に浮かんだ涙をぬぐう。そうして顔を上げたところで、彼はようやくディーとスヴェンの存在に気がついた。
「えーと、あの、討伐士協会に何かご用ですか……?」
 一瞬気まずそうに視線をさまよわせたあと、どこか困ったような笑みを浮かべて青年が問いかけた。
「大変申し訳ないんですが、今はちょっと仕事を請けられる状態じゃないんですよ」
 そう言って申し訳なさそうに頭を下げた青年に、いいえ、とディーは(かぶり)を振る。
「ただの通りすがりですから、どうぞお気遣いなく」
 そう言って会釈するとディーは(きびす)を返した。そのまま歩き出したディーに、一瞬戸惑ったように青年と彼女の背中とを見比べた後、スヴェンは慌ててディーを追いかけた。
 あとに残された青年は不思議そうな表情を浮かべて二人を見送っていたが、やがて屋内に視線をやって大きくため息をつくと扉をくぐった。


 小走りになってスヴェンはディーのあとを追いかける。さして早足には見えないのにその小柄なうしろ姿との距離はなかなか詰まらず、全力疾走して隣に並ぶ。
「なぁ、何か用があったんじゃないのか?」
 わざわざ支部まで足を運んだのに、すぐに立ち去る理由がわからない。あの青年がいては何か問題があるのだろうかと思って問いかけると、そういうわけではないのだとディーは(かぶり)を振った。
「用はありましたが、もう済みました」
 淡々とした答えに、スヴェンは首をひねる。あの青年の観察以外、特に何かしていたようには思えないのだが。まあ、本人が用は済んだと言うのだから、問題はないのだろうと自分を納得させる。
「それなら街の案内に戻るけど、いいか?」
「ええ、お願いします」
 うなずいたディーを見ると、スヴェンは案内を再開すべく街の中心部へと向かった。


 街をほぼ一周し、北部の住宅街を歩いていた時だった。一軒の家の前で、不意にスヴェンが足を止めた。そのまま立ち尽くしてしまったスヴェンに気づき、ディーも足を止める。
「スヴェンさん?」
 振り返ってどうかしたのかと問いかけるディーに、スヴェンは生返事するばかりだ。
 しばらく家を見つめていたが、やがてスヴェンはディーの方へと顔を向けた。
「ここ、オレの家なんだけどさ……」
 そう言って、彼はまた言いよどんだ。ためらうように視線が泳ぐ。
「あの、さ……。もしかしたら、母さんが失礼なことを言うかもしれないんだけど……許してやってくれないかな」
 つっかえつっかえの言葉に、ディーはしばし考え込む様子を見せた。
「討伐士がお嫌いですか」
 街が異形によって危機にさらされている現状で、人々を守るべき討伐士たちが真っ先に逃げ出したのでは不信感も募るというものである。しかし、スヴェンはそれに否定で返した。
「討伐士に対しては、むしろ好意的に捉えてる方だと思うよ」
 だけど、とまた言葉を濁す。しばらく沈黙していたが、やがてスヴェンは大きくため息を吐き出した。
「こればっかりは、見てもらうしかないかなぁ……」
 どこか諦観(ていかん)の混じった声でつぶやいて、スヴェンはドアへと手を伸ばす。
 ゆっくりとノブを回し、ドアを開けたその瞬間――。
「お帰りなさい!」
 朗らかな女の声が二人を出迎えた。
 玄関にはエプロンをした女が二人を待ち構えるようにして立っていた。にこにこと笑うその顔はスヴェンとそっくりだ。女はディーへと視線を向けると、笑みを一層深くした。
「あなたがディーさんね? 私はミーネ、ダニエルの妻です。あの人の依頼を請けてくれて感謝するわ」
 そう言ってまた笑うと、ミーネはしげしげとディーを見つめた。
「あの人から聞いていたけれど、本当にかわいらしいわぁ」
 満面の笑みを浮かべるミーネに、ディーは言葉を探すようにしばらく思案した後、どうもとだけ返した。背後にいるスヴェンに問いかけるように視線を向ける。
 スヴェンは困ったように眉を寄せ、額に手を当ててつぶやいた。
「……うん、つまりこういうことです」
 人の話、全然聞かないんだ、母さん。ため息混じりの息子のつぶやきには気づかぬまま、ミーネはどこかはしゃいだように声を上げる。
「ねぇ、ディーさん。今日はうちに泊っていってくださるのよね?」
 有無を言わさぬ問いかけにディーがうなずいたのは、ある意味仕方のないことだったのかもしれない。


         ◆


 ちゃぷんとお湯が跳ね、水音がバスルームに反響した。身体を抱え込み、沈むようにして湯船につかったディーはため息をついた。――どうしてこうなったのだろうか。
 ミーネに押し切られる形でレングナー家に滞在することが決まると、長旅で疲れているだろうからと風呂を勧められた。人の良さそうな笑顔のミーネを相手にすると、非常に断りづらい。
「ディーさん、お湯加減はどうかしらぁ?」
 ガラス戸を隔てた脱衣所からミーネの声が聞こえてくる。それに丁度いいですと答えると、安心したような声が返ってきた。
「タオルと着替え、ここに置いておきますから使ってくださいね」
「すみません、ありがとうございます」
「いいえ、お気になさらないで」
 どうぞごゆっくりと言い置いて、ミーネが脱衣所を出ていく。それを確認すると、ディーは湯船から体を引き上げた。湯船の縁に腰かけ、首から下げていたメダルを手に取る。
 楯と剣の紋章が刻まれた、討伐士の認定証。討伐士であれば常に携帯することを求められる、身分証明書を兼ねる物。万が一、人目に触れることがあってはならないとバスルームに持ち込んだが、正解だったようだ。
 錆に強い特殊な合金で作られたメダルを一撫でし、裏返す。裏側には所有者の名前と、その人物がライセンスを取得した日付、それから討伐士としてのランクが刻印されている。ディーの手の中のメダルは表も裏も共に傷だらけで、刻まれた文字の判読は難しい。
 メダルを見下ろし、ディーはつぶやきを漏らす。――どうして依頼を請けてしまったのだろうか。
 知らず、指先が辿る。メダルの傷跡――その下に刻まれた名前を。
 全部、捨てたはずだった。三年前のあの日に、名前も何もかも、すべて。
 けれど彼女の手の中には、今も討伐士の認定証が存在する。
 それこそが真実。在りし日の過去として、捨て去れない証拠。


「母さん! 一体何を考えてるんだよ!?」
 叩きつけるような叫びに、ミーネはきょとんとして首を傾げた。
「何を怒っているの? スヴェン」
 なぜ怒鳴られているのか理解できない、そんな表情を浮かべて自分を見返してくる母親にスヴェンは肩を落とした。ごっそりと失せた気力をどうにかかき集めて口を開く。
「――いくらなんでも、失礼だろ」
 その言葉にさらに首を傾げ、ミーネはディーを振り仰いだ。
「ねぇ、ディーさん。私、何か失礼なことをしたかしらぁ?」
「客を着せ替え人形扱いするのは、どう考えても失礼だと思うよ!?」
 いい加減自覚してよとスヴェンが叫ぶが、ミーネは不満そうな声を上げた。
「だって似合うと思ったんだもの」
「そういう問題じゃないだろ!?」
 どうしてわかってくれないんだ、と血を吐くような声でスヴェンが訴えるも、まったくもって暖簾(のれん)に腕押しだ。騒がしい親子のやり取りを聞きながら、ディーは自分の体を見下ろした。
 ひらひらしたレースやフリルをたっぷりと使った、少女趣味全開なドレス。風呂上がりに用意されていた着替えも、ここまでひどくはなかったが似たようなものだった。
 ひらひらした服を着たディーを見たミーネがかわいいと声を上げて興奮し、これも着てあれも着てと色々引っ張り出してきたのだ。あまりにもされるがままだったディーを見かねたスヴェンが声を上げ、今の状況に至っている。
「ディーさんは、こういう服はお嫌い?」
「いえ……別に嫌いではないです」
 小さく(かぶり)を振ったディーに、ミーネは満面の笑みを浮かべた。息子の方へと振り返ると、得意げに胸を張る。
「ディーさんはこういう服がお好きみたいよ?」
「【嫌いじゃない】と【好き】とは全然意味が違うッ!」
 だん、と床を踏み鳴らして叫んだスヴェンは、ディーへと視線を向けた。
「ディーも、遠慮してないで怒っていいんだよ!?」
 むしろハッキリ言ってやってくれと懇願するスヴェンに、ディーは困惑したようにわずかに首を傾げた。着せられたドレス、ご満悦なミーネ、すがるような眼差しのスヴェンとを順番に見やる。考え込むようにもう一度首を傾げたあと、彼女はぽつりとつぶやいた。
「慣れていますので」
「慣れとか、そういう問題じゃないだろ!?」
 もう一度叫んで、スヴェンはがっくりと肩を落とした。
「ていうかさ、どういう意味だよ、ソレ……」
「言葉通りですよ。わたしを着せ替え人形にして遊ぶ知人がいましたので、この程度今更何とも思いませんよ」
 サラリと言い放ったディーに、スヴェンはさらに脱力する。そんなスヴェンを見つめ、ディーは付け加える。
「他人を着飾って遊ぶのが好きな人間はどこにでもいますよ。そう言う類は、えてして何を言っても聞きはしませんから、諦めが肝心です」
 悟りの境地に至ったかのようなディーの言葉に反論とも同意ともつかない声を上げたスヴェンは、どこか遠くを見つめながら思った。――この人、いったい今までどんな目に遭ってきたんだろうか。


 もはや完全に傍観者と化したスヴェンの前で、ミーネは楽しげにディーを着飾らせる。
 次はこれを着て、と淡いピンクのドレスを差し出したところで、玄関からドアの開く音が聞こえた。気づいたミーネがそちらへと顔を向けてつぶやいた。
「あら、ダニエルさんが帰ってきたみたいね」
「え? 父さん、まだ帰ってきてなかったの?」
 たった今気づいたとばかりに声を上げてスヴェンが母親を見やる。そういえば駅で別れてから一度も父親の顔を見ていない。てっきり部屋で休んでいるものとばかり思っていたのだが、どうやら違っていたようだ。
「いいえ、一度は帰って来たのよ? けれど、お仕事があると言ってまた出かけたの」
 そうミーネが説明している間に、ダニエルが居間へと顔を出した。
「お邪魔しています」
 そう言って頭を下げたディーの傍らには、一人ファッションショーの結果築き上げられた服の山がある。それに一瞬ぎょっとしたように目を剥いたものの、ダニエルは見なかったことにしたのかディーに会釈を返した。
「役場で話を聞いてきたのですが、どうも少しばかりややこしいことになっているようです」
 額に手を当て、ため息混じりにつぶやかれたダニエルの言葉に、ディーには思い当たることがあった。
「協会から派遣されてきた討伐士のことですか?」
 ディーがそう問いかけると、ダニエルは驚いたように顔を上げた。
「ご存知でしたか。昨日、役場に討伐士を名乗る者が訪ねてきたそうです」
 街に来たのは様子見を兼ねた先遣隊が二人、支部運営のための人員は後ほど送られてくるというのが、役場を訪れた討伐士の話だった。役場としては、彼らにどう対処するかで揉めている真っ最中らしい。
「今日もまた役場に来まして……。討伐士協会からの書状と言うのも見せられたのですが、正直、どこまで信用していいのかわからないのです」
 そう言って、ダニエルはまたため息を吐き出した。彼の話に耳を傾けていたディーは小さくうなずき、口を開く。
「彼らの身元については信用しても問題ないでしょう。そのうちの一人に会いましたが、間違いなく討伐士です」
「それって昼間のアイツか? 何で討伐士だって断言できるんだ?」
 不思議そうに首を傾げて口を挟んだスヴェンに、根拠はあるとディーは答えた。
「討伐士には支給された制服があります。あとはライセンスの認定証。これらには着用義務がありますから」
 その説明に、納得したように声を上げてスヴェンはうなずいた。確かに、昼間の青年は討伐士たちの特徴である藍色のコートを身にまとっていた。その左胸にはメダルがつけられていたようにも思う。
 だけど、とスヴェンは口を開く。
「それ、偽物だったりしないの?」
 ある意味当然ともいえるその疑問に、間違いないとディーはうなずいた。
「討伐士であれば、ほとんどの者が認定証の真贋(しんがん)が見分けられますよ」
 認定証のメダルに使われているのは特殊な合金である。独特の色と光沢を放つので見る者が見ればすぐにそれとわかるし、その製法も極秘とされているため一般に出回ることはまずない。それゆえに認定証を偽造することはほぼ不可能だと言えた。
「その討伐士の能力面についてですが、これも信頼していいと思います」
 わずか二名を先遣隊として送り込んできたのだ。目的は状況把握のためとはいえ、相当の実力者であると思われた。
「彼らは何と言っていたのです?」
「街への滞在と、旧坑道探索の許可を求めてきました。彼らの要求を呑んでもいいものか、一度ディーさんに相談したいと思いまして」
 どうするべきかとの問いかけにしばらく思案する様子を見せたあと、許可は出すべきだろうとディーは答えた。
 討伐士協会からの書状を見せられたとダニエルは言っていた。おそらくそれは【先遣隊に全権を委任する】といった内容のものだろう。協会が信用できないから拒絶すると言うならともかく、今後協会の力を必要とするのであれば彼らの要求を拒むのは得策ではない。ゆえに、許可は出すべきだ。
 そう説明したあと、ディーは言葉を付け加える。
「念のため、探索は明日以降と条件を付けてください」
 あちらも少人数だ、よほどのことがない限り無茶な真似はしないと思われるが、何分(なにぶん)人間相手であるためこちらの思惑通りに動いてくれるとは限らない。
 ディーの言葉にうなずくと、そのように取り計らうと言ってダニエルは玄関へと向かった。役場へと戻り、指示を出すのだろう。
 少し思案したあと、ディーもまたダニエルを追って玄関へと向かった。


 レングナー家を出ると、少し先にダニエルの背中が見えた。
「待ってください」
 ディーの声に、ダニエルが足を止めて振り返った。追いかけてくるディーの姿を認めると、彼は驚いたように目を瞠ってどうかしましたかと問いかける。
「わたしの言葉をそこまで信用していいのですか?」
 認定証を持つものの、ディーはあくまでも【自称】討伐士だ。疑わしさで言えば、協会から派遣されてきたという二人とさして変わらないだろう。委任状に関しても、協会に問い合わせればそれで済む話であるし、時間はかかるだろうが実際それが一番確実な方法のはずだ。
 そう訴えたディーに、ダニエルは目元を和ませた。
「これでも、私は人を見る目は確かなつもりですよ」
「……お人好しですね」
「そうでしょうか?」
 ディーの言葉に小さく笑い、ダニエルは口を開く。
「そういえばディーさん。貴方は私の依頼を請けた時、報酬に関する話を一切しませんでしたね?」
 ディーはダニエルから状況に関する詳細を求めるだけで、疑問点に口を挟む時以外はずっと聞き役に徹していた。今回の件に関する契約書にも、報酬に関しては何も記載されてはいなかったのだ。それを記載する欄があったにも関わらず。
「あとで吹っ掛けるつもりなのかもしれませんよ」
 本気とも冗談ともつかない声音で言われた言葉に、ダニエルは笑みを深くする。
「足元を見て吹っ掛けるのなら、最初にやった方が効果的だと思いますが?」
 根も葉もない噂を頼るほどにダニエルは追い詰められていたのだ。よほど法外な金額でもない限り、どんな金額を提示されたとしても彼はうなずいただろう。
「報酬を受け取るつもりなんて、貴方には最初からなかったんでしょう?」
 沈黙を保つ娘に、ダニエルは続ける。
「それに最初に会った時、貴方は私に対して忠告しましたよね。無関係な人間なのだから捨て置くことだってできたのに、わざわざ声をかけたんです」
 微笑んで彼はささやく。――お人好しなのは貴方の方でしょう?
 一歩ディーに近寄ると、ダニエルはその手に一本の鍵を握らせた。
「……これは?」
「旧坑道の鍵です。明日の正午、私の使いの者が鍵を持って旧坑道に行く――そのように協会の討伐士たちに伝えます。使者として、行ってもらえますか?」
「彼らと協力しろということでしょうか?」
 問いに問いで返したディーに、ダニエルは(かぶり)を振った。
「どうするのかは貴方にお任せします」
 問いかけるように、あるいはその真意を量ろうとするかのようにダニエルへと視線を注いでいたが、やがてディーは小さくうなずいた。


         ◆


 かすかな音でハンスは目を覚ました。テーブルに伏せていた体を上げ、寝ぼけ眼をこすりながら音の出所――ドアの方を見やると、そこにはアルヴィーンの姿があった。
「お帰りなさい、アルヴィーンさん。ずいぶん遅かったですね」
 時計を見やればもう日付が変わろうかという時刻だ。昼前に出ていったことを抜きにしても、話し合いが難航していたであろうことは想像に難くなかった。
「んー、信用がガタ落ちしててちょっとな」
 アルヴィーンは冗談めかして笑ったものの、その顔には疲労の色が濃い。それを見て、これは相当旗色が悪そうだとハンスは考える。最悪、街から追い出されるかもしれない。
 イスに腰を下ろすと、アルヴィーンはテーブルに肘をついて両手に額を押し当てた。深々と息を吐きだす。常は何があろうと泰然自若とした態度を崩さないだけに、よほど風当たりが強かったようだとハンスは察する。
 立ち上がると、ハンスはポットに保温していた湯を沸かし直してお茶を入れた。
 そっとティーカップをテーブルに置くと、それに気づいたアルヴィーンが顔を上げた。自分の前に置かれたティーカップに気づくと、驚いたように目を瞠る。
「ああ、悪い」
 かすれたつぶやきに、いいえと首を横に振ると、ハンスは自分の分を手にアルヴィーンの前に腰かけた。両手でカップを抱え、アルヴィーンの言葉を待つ間紅茶に口をつける。馥郁(ふくいく)とした香りが口の中に広がるが、それを楽しむゆとりはない。
 アルヴィーンは大きくため息をつくとティーカップに手を伸ばした。わずかに口に含む。
「とりあえず、こっちの要求は通った」
 その言葉にハンスは胸を撫で下ろした。街から追い出されるという、最悪の事態だけはどうにか避けられたようだ。
「問題の旧坑道の調査許可も下りた。明日の正午、市長の使いが鍵を持ってくるらしい。旧坑道の前で落ち合う段取りになっている」
「よかった……。どうにか任務は遂行できそうですね」
 ほっとした様子で笑みを浮かべるハンスに、アルヴィーンは曖昧にうなずいた。
「で、そっちの首尾は? 討伐記録、見つかったのか?」
 問いかけに、ギクリとハンスが肩を強張らせる。
「ええと、あるにはあったんですが……」
 言葉を濁しながら、ハンスは(かたわ)らに置いていた書類を差し出す。受け取ったアルヴィーンは紙面へと視線を走らせたが、すぐにそれをテーブルの上に投げだした。
「使い物にならないな」
 ため息混じりのつぶやきに、やっぱりですかとハンスはうなだれる。そんな反応が返ってくるだろうとは思っていたのだ。何しろ見つかった記録には、彼らが本部で見せられた手配書と同程度の情報しか記されていなかったのだから。直接対応した支部の記録であればもう少し詳細な情報が残されているかと思っていたのだが、期待外れにも程があった。
 背もたれに体重をかけ、頭のうしろで手を組むとアルヴィーンはハンスへと視線を投げた。
「まあ、あんまり期待はしてなかったけどな。俺が出ていた間、何か変わったことはあったか?」
 期待してなかったなら、どうして探させたんですか。喉元まで出かかったその言葉をどうにか飲み込むと、ハンスは記憶を手繰るように天井を見上げた。変わったこと、何かあっただろうか?
「――ああ、そういえば人が来ましたよ」
「人ぉ? 傭兵とか、そういう類か?」
 訝しげに声を上げたアルヴィーンに、違いますよと答える。
姉弟(きょうだい)ですかね? 二人連れで、女の子の方が十代後半くらい、男の子の方が十代前半くらいに見えました」
 あの少女はただ通りすがっただけだと言っていたけれど、一般市民が用のある施設はこのあたりには存在しない。受け答えの様子もどこか違和感があったから、よく覚えている。
「二人とも結構身形(みなり)もよかったですし、女の子の方は言葉遣いも丁寧で物腰も落ち着いた雰囲気でした。いいとこの子だったりするんですかねぇ?」
 同意を求めるように首を傾げると、そんなわけないだろと一蹴された。
「良家のお嬢ちゃんお坊ちゃんが、供も連れずにこんなところをフラフラ歩くかよ」
 外壁の門付近、それも住民を見捨てて逃げ出したような討伐士協会の建物付近である。まず間違いなく近寄るなと言い含められているだろう。やんちゃな子どもであれば好奇心から言いつけを破る可能性もあるが、ハンスの語る内容から考える限りそれはないだろう。
「どこの誰かは知らないが……偵察か?」
 そう考えるのが自然なように思えた。だが仮に偵察だとして、それこそどこの誰が、何の目的で行ったというのだろうか。わからないが、何にせよ警戒するに越したことはないだろうとアルヴィーンは結論づけた。
製作者:篠宮雷歌